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噴出する矛盾の根底に「構造改革」路線

11/29日は購読している二紙で論壇時評が掲載されていた。論壇時評は月刊誌などの論調を紹介してくれるので、そんなに多くを読めない私などにとっては便利なものだ。
朝日では杉田敦氏が専門職批判という視点からいくつか紹介している。そのなかで、元経済官僚の加藤創太氏が「行政府のリーダーである大臣が、メディアで公然と自分の直属の部下であるはずの官僚たちを罵倒に近い形で批判する」ことの異常さを指摘していることに注目。たしかに、舛添厚労相の発言などは役人を敵に回し、厚労省の責任者であるはずの大臣を国民の側に持ってきて対立の構図を作り上げている気がするし、社会保険庁の官僚・労働者にボーナスの自主的に返納させる風潮などは筋が違うのではないかと私も思う。一方
加藤によれば、いわゆる政治主導路線は、小渕内閣時の石原伸晃ら「政策新人類」登場に始まるが、それら若手政治家たちには、外資系金融機関が「専属の担当者を常時貼り付けていた」。政治主導とは市場主導であり、民営化とは私有化ではないかとの疑念につながる指摘であろう。
と紹介しているが、まさに構造改革の本質が見え隠れする。
次に注目するのはいわゆる「クレーマー」患者、「クレーマ」親問題だ。この問題など、本屋で積まれている「クレーマ」問題をのぞいたりしていると、単に批判ばかりするおばさん(失礼)にどう対処するかみたいなことだろうととらえていたら、ここにも政治の思惑があるらしきことがわかってくる。杉田は
政治家や政府が、「民意」を後ろ盾に中心的な役割を果たしている。教師は「サービス労働者」としての「消費者」の要求に従えという市場主義的な発想と、教師は公務員として政府の方針に従えという国家主義的な議論とが、教育改革論として連動している面がある。
と指摘する。
この問題でさらにつっこんでいるのがしんぶん赤旗の論壇時評だ。
朝日と同様「クレーマ」問題を特集している『中央公論』から小野田正利氏の「追いつめる親、追いつめられる学校」をとりあげている。小野田氏は学校が保護者や近隣住民から苦情を受け、それが教職員のストレスを増大させている事態の背景に「教育改革」によって学校、教職員が過度に痛めつけられていることとともに、
バウチャー制度や学校選択制の導入で学校教育を「商品」と扱い、保護者と教師を「顧客とサービス提供者」とみなす風潮が助長され、子どものために対等の立場で協力しあうという、保護者と教師の本来の関係が壊されたと「構造改革」を批判
していることを紹介する(強調は引用者)。
また、『論座』の本田由紀・高橋睦子「崖っぷちの教育界を救うために今、私たちができること」という対談を取り上げ、
政府やメディアが、教職員に「ダメ教師」などのレッテルを張る一方、学校に抗議の声をあげる保護者を「モンスターペアレント」と攻撃するなど、「教員と保護者の対立があおられている」現状に疑問を呈し、その「対立」は外部から持ち込まれた感じがすると指摘します。
と紹介、
「権力にしても資本にしても、一般の人びとが個々ばらばらのほうが扱いやすい」「それに人びとが乗ってしまうことは、本当に自分で自分の首を絞めることになると思う」という本田氏の言葉は「構造改革」推進勢力の手法を的確についています。
と指摘する。 論壇時評の評者、谷本諭氏は結びで
各分野で噴出する矛盾の根底に、「構造改革」があることを指摘する論考が目立っています。また国民の中に「対立」をつくりだすことは「構造改革」の「常とう手段」・・・ですが、そうした「分断」を乗りこえ、新たな「連帯」を模索する議論が登場し始めたことは、注目に値する(強調は引用者)
と締めくくっているが、溜飲が下がる思いがした。
(それにしても論壇時評をブログで紹介するというのは二重に引用することになってしまい、うまくない。)

この日の朝日新聞ではこのほか、『私の視点』というページで生活保護と派遣労働が取り上げられていた。
NPO法人もやい代表理事の稲葉剛氏は、厚生労働省が生活保護費見直しに入ったことに関し、受給資格を満たす多くの人が地方自治体の窓口で追い返されている現実をふまえ、
水際で受給者を絞り込んで貧困生活を強要し、その水準が低いからと今度は生活保護の水準を下げるというのでは、憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」からは遠ざかる一方だ。
と指摘するがまったくその通りだ。
派遣社員の吉村宗夫氏は、生鮮食品加工センターで働いているが、日々10人ほどが日雇い派遣労働者だという。そして問題なのはこうした日雇い派遣労働者に対して、食品加工に携わるために必要な衛生管理が、派遣先できちんとできていないことだ、と指摘する。食品に触れる仕事に従事する人は、検便や健康診断などを定期的に受けることが義務づけられているが、日雇い派遣労働者はこの対象からはずれているというのだ。吉村氏は、
食の安全は、食品を扱う労働者が健康体であるというのが基本である。こうした理由から、食品の安全性が担保されない可能性がある限り、食品加工業者が日雇い派遣労働者を受け入れることを法律で禁止すべきだと考える。
と結んでいる。食品加工業に限らず、少なからぬ職場でこのような問題は生じているのではないだろうか。

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コメント

「元経済官僚の加藤創太」のところ、高橋創太と誤記していましたので修正しました。

投稿: アンドレ・アカシ | 2007年12月 5日 (水) 17時00分

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