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2008年1月

株安・円高で混乱を極める朝日社説

株安と円高が止まらない。
18日の東京株式市場は、日経平均株価の午前の終値が前日比387円67銭安い1万3395円78銭と大幅に反落し、05年10月以来、2年3カ月ぶりの安値水準となった。米景気の後退懸念と円高の進行を背景に、輸出関連企業を中心として全業種で売り注文が先行した。(asahi.com)
1/17の朝日新聞朝刊をを読んでいくと、サブプライムローン問題が各国の市場で混乱を広げ、なかでも東京市場で顕著な株安・円高になっていることを報じているが、
市場では規制緩和などの構造改革や財政再建を求める声が強いが、福田政権では改革路線が停滞しているとの失望感が強く、日本株売りに拍車をかけている。
というところで首をかしげた。経済の専門家でもない私だが「構造改革」路線を若干修正したのは今のタイミングではないし、多分に金融問題が絡んでいる今回の株安などが「改革路線の停滞」のためにおきているというのはちょっと違うのではないかと思ったのだ。金融自由化などの新自由主義的改革のもとで、高リスクのサブプライムローンの債券化などがおこったという世界の現実をも無視しているとしか思えない。
同日の社説では『株安・円高 「もろさ」克服の機会に』と題してこの問題を扱っている。
戦後最長といわれるいまの景気だが、内需の主役である個人消費はずっとさえないままだ。賃金所得が増えないのだから、それも当然といえる。輸出の好調が企業の収益を潤し、それが設備投資に回るという1本足打法の景気構造は、もともと弱さを抱えていた。
米国経済の雲行きが怪しくなり、輸出に不安がよぎれば、株価が打撃を受けるのは目に見えている。
とここまではわかる。 このあと株式市場が「外国人頼み」であること、アメリカ経済変調の深刻さなどを指摘した後で、「日本はそれにどう備えるか」と論を進めるのだが、
ひとつは、国政の停滞感を打開することだ。株安には福田首相の受け身の政治姿勢が少なからず影響している。与野党は、国会のねじれ状態を乗り越えスピード感をもって改革を進めていく、という信頼を取り戻す必要があろう。
 企業も長く異常な円安のぬるま湯につかり、輸出依存を改善できなかったことを大いに反省すべきだ。円高はこの体質の転換を促し、原油・穀物相場の高騰を和らげるプラスの効果ももつ。
 この機会にサービス部門の生産性を上げるなど、内需主導の経済成長に向けた自己改革を進めなければならない。
と結んでいるのにはやはり首をかしげざるを得ない。社説前半の「個人消費はずっとさえないままだ」、「輸出の好調が企業の収益を潤し、それが設備投資に回るという1本足打法の景気構造」が悪いという分析に全く対応していないからだ。「内需主導」をいうなら社会保障削減路線をやめ、「内需の主役である個人消費」を高める方策をとるべきと考えるのが普通だろう。
このような景気構造にした犯人こそが「構造改革」路線だったということにようやく国民の多くが気づき始めているときに、『朝日』は特定の見方にとらわれているように感じられる。もっともこの「新自由主義」には『朝日』に限らず大マスコミの多くが今まだ取り込まれてしまっているのだが。

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まったなしの地球温暖化問題

Co2 お正月の新聞では地球温暖化に関するものが多かった。テレビのコマーシャルでも温暖化防止に関係したものが多かったような気がする。企業がこうしたコマーシャルを打つ目的は2つあると思う。1つは企業イメージをよくすること。もう1つは他社との商品の競争において、地球温暖化防止という点で差別化を図ろうとすること。その前提には消費者が環境問題に関心をもってきていること、商品の選択において環境問題をその基準にするようになっていることがあり、双方にとって良いことだと思う。
さて、これだけマスコミへの露出が多くなった背景には今年から京都議定書できめた温室効果ガス削減の約束年度にはいることと、昨年行われたCOP13(国際気候変動枠組み条約第13回締約国会議)があると思われる。今年日本で行われるの洞爺湖サミットが地球温暖化問題を最重要議題としているということもあるかもしれない。

COP13では先進国と途上国が温室効果ガス削減目標と対策を検討するという合意に達したことは重要な成果だが、「世界全体で排出量を50年までに半減する」という目標数値がアメリカ、日本の反対で採択文書から削除されたことが残念なことだ、と言われている。
COP13では「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の第4次報告書の内容が注釈という形で確認されたが、そこでは温暖化は人間活動で出る温室効果ガスが原因とほぼ断定し、「今後10-15年の間に排出量を減少に転じないと取り返しがつかなくなる」と警告している。COP13では2009までに京都議定書後の枠組みを決めることになっているが、その意味では今年からの2年間が人類の未来にとって決定的な意味を持つということになる。
そのようなときに、日本が京都議定書の目標6%削減の基準年1990年から逆に7%近く排出量を増やしていること、政府が数値目標の設定自体に消極的になっていることをどう考えたらよいのだろうか。昨年11月、12月の新聞スクラップから考えてみる。

昨年11月、経済産業省と環境省の合同審議会は各業界の取り組み状況を検証した。そのなかで自主削減目標を達成できなかったのは日本鉄鋼連盟、電気事業連合会など11業界だった。その鉄鋼業界の言い分を聞いてみよう。
新日鐵社長の三村明夫氏は朝日新聞のインタビューに答えて、排出量取引について、
「(排出枠を)公平なものにするには、国、企業ごとに正当な排出枠を割り当てる必要があるが、それは不可能だろう。日本の鉄鋼メーカーは世界一の省エネルギー技術を持ち、生産量あたりのCO2排出量は最小だ。しかし、これまでの省エネ努力を考慮せずにきびしい排出枠が割り当てられれば、日本での鉄鋼生産が押さえられてしまう。逆に省エネ技術は後れているのに大きな排出枠をもらう国のメーカーは、非効率な生産を拡大して、地球全体の排出量をむしろ増やしてしまう」
と主張している。先進国の多くの国が排出量を減らし始めているなかで逆に増やしている日本の、特に増やしている部門の会社が減らすように枠をはめられたら世界の排出量をふやすことになるという理屈はどうなのだろう。CO2削減の方法については、日本企業の排出量削減のための技術を、発展途上国などに移転することだとし、目標については排出総量ではなく、生産量あたりの排出量にすべきだという。現行の技術で足りない分は革新的な技術開発を進めて補うしかない、とする。これでは地球全体で削減する保障がまったくないことになる。

電力業界のほうはどうかと言えば、国の全排出量に占める石炭火力発電によるCO2排出量の割合が、京都議定書の基準年1990の4.76%から2005年には15.08%に増加していることが国会審議のなかで明らかになっている。石炭火力を増やすのはエネルギー安保や安価の石炭でコスト削減という観点からだろうがその結果CO2が増えているのでは自主削減という方法自体に問題があると言わざるを得ないだろう。

一方政府は洞爺湖サミットに向け、産業部門別にCO2の排出量目標を立て、国別の総力削減目標と合わせて温室効果ガス削減を目指す方式を採用することを働きかける方針を表明するという。経済活動量あたりのCO2排出量を指標として目標を設定するので、経済活動量が増えれば排出量が増える可能性もあり、大幅な排出削減が実現できる保障はないとの批判が避けられない(朝日07年12/10付け)、といわれている。この方式は前に掲げた新日鐵社長の発言と符合してくる。
また、昨年12/21環境省と経済産業省の合同審議会は政府の目標達成の見直し案をだしたが、追加削減策を入れたものの、相変わらず企業の自主計画と国民運動に頼ったもので、実効性がないと批判されている。

このように見てくると、日本の場合、大口排出者である企業の消極的な姿勢に引っ張られて、政府が積極的になれないということがわかってくる。

地球温暖化対策の先進国の場合はどうか。
ドイツ政府は2020年までに温室効果ガス排出を90年比で最大40%削減する目標を定めた。対策としては自然エネルギーを現行の13%から25~30%に引き上げる、車の税金を排気量ではなくCO2排出量決める、住宅の太陽光利用への補助金などが挙げられている(朝日07年12/2付け)。(2010年までの自然エネルギーの導入目標はドイツ12.%、フランス20%、イギリス10%などにたいし、日本は1.35%!)
温暖化対策に消極的と言われてきた米国でも、発電所や工場、自動車燃料を対象に排出枠を設定し、年々、その枠を縮小、排出量取引を併用して、2050年に排出量を05年レベルから63%減らすことを目指す法案が議論されている。

民間でも、昨年11月30日、欧米豪と中国の150以上の企業が地球温暖化対策の強化を求めて共同宣言を発表。京都議定書後の温暖化対策について、温室効果ガス排出量を科学的な知見に基づき数値目標を設けて規制する枠組みを支持した(しんぶん赤旗07年12/2付け)。イギリスでも、約24万の企業・業者を参加に置く英産業連盟は2050年までにCO2排出量を1990年比で6割削減する英政府の目標は「早期に対策を取れば、負担可能なコストで達成できる」と指摘した(しんぶん赤旗07年12/18付け)。

このような政府・企業の姿勢の差はどかから出てくるのだろうか

NGO「第3世代環境主義」気候・エネルギー安全保障担当理事のJ・モーガン氏は朝日新聞のインタビューで
(聞き手)欧州では企業に排出枠を設定し、過不足分を売買する排出量取引制度(キャップ・アンド・トレード)を構築した際には、NGOが様々な提案をしたと聞きました。
「・・・まずこの制度に興味を持つ企業と一緒に動き始めた。政治家は当初、その重要性に気づいていなかったが、NGOが説得した。国民にその良さを理解してもらう活動にも力を入れ、政治家らと一緒に詳しい報告書を出すこともできた。こうした努力の結果、一般の企業も、その報告書が信頼できるものと認めてくれた。・・・NGOが政治的な意思を形成し、連帯感を作り出したのだ。」
という(朝日07年12/24付け)。なぜ日本のNGOにこれだけの影響力がないのだろう、と考えてしまうが、たとえば投資活動においてもこうした差は現れている。
投資の際に環境や人権などを考慮するSRIファンド(社会的責任投資)やエコファンドの市場規模は米国250兆円、欧州155兆円にたいして日本1兆円と桁が違う。日本ではまだ個人投資家が中心なのに対し、欧米では保険会社や年金基金など機関投資家の資金が動く。背景には市民の声があるという。国際NGO「熱帯林行動ネットワーク」は世界の金融大手に対し、温暖化を助長する石炭発電などへの「破壊的投資をやめろ」キャンペーンを展開。シティグループに融資での環境方針を作らせた(朝日07年12/2付け)。
企業が環境のことを考慮せざるを得ないような大きな圧力が市民からかけれられているのだ。日本の企業にはこのような姿勢の変化が期待できるだろうか。
国連環境計画金融イニシアチブ特別顧問の末吉竹二郎氏は、経団連が「規制は企業の自主性と国際競争力を損ない、官僚統制を招く」と反発していることについて、
公害の激しかった頃、裁判で企業は敗訴し、国は厳しい規制措置をとった。産業界は銀行から巨額の融資を受けて設備投資をし、技術革新を進めて国際競争力を高めた。この歴史的事実に目を背けているとしか思えない。経団連は自主行動計画でやると言っている。しかし世界の流れで規制的手段が入るのは目前だ。経団連の言うとおりにやったがうまくいかず新たな規制に従うことになったとき、投資から過去の責任を追及されるのではないか
という(朝日07年12/17付け、強調は引用者)。

英政府の諮問で報告「気候変動の経済影響」をまとめた、元世銀エコノミストでロンドン大学経済政治学院教授のN・スターン氏はこの報告書で、温暖化を放置すれば損失は世界の国内総生産(GDP)の20%に登る恐れもあるが、GDP1%のコストでそれを防げるとしているが、同じシリーズのインタビューに答え、
1%のコストは経済成長の障害にはならない。・・・この程度のコストは経済全体が吸収できるものだ
と楽観的な見通しを述べ、
日本は、他の先進諸国と同じように排出量は大きけれども、エネルギー効率の良さという点では先進諸国の中でも際だっている。この点で日本にはリーダーシップを取る資格があると思う。
とも言っている。

アメリカ企業の最近の変化にも、このままでは技術においても欧州に先を越されかねないという判断があるように思われる。また、日本国内で対策が進まない場合、海外からの排出枠を購入するための国民負担は最大1兆2千億円に上ると言われている。これらの現実を個別企業はともかく経団連などには理解できないはずはない。要は企業、政府に環境問題に積極的な行動を取らせるよう、市民、政党が圧力を加えることだ。日本は公害反対運動では政府・企業を動かす力を発揮してきた歴史がある。また、冒頭にも書いたように、今企業も消費者の環境への関心の増大を気にしており、そのことは可能だと思う。

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