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中国製ギョーザによる中毒事件

中国製冷凍ギョーザによる中毒問題は、日本、中国双方にとって重大な問題を浮き彫りにしていると思われる。
この問題を巡って一部のブログや週刊誌などでは一方的な中国批判が行われ、中国でも市民の中に”日本の過剰反応”といった見方があるらしいが、双方において冷静に問題の根源までさかのぼった議論が必要であるように思う。

まず日本の問題を考える。
朝日新聞2/2付けによれば、
カロリーベースで食べ物の6割を海外に頼る日本。食料品の輸入額は昨年、約5兆3千億円。うち2割が中国からで、魚介、野菜、肉など約9100億円。10年前に比べ、輸入総額は5%増にとどまっているのに対し、中国からは50%の伸びだ。押し上げているのは焼き鳥、魚のフライ、牛丼の具など加工食品の増加だ。いわば中国が「食の簡便化志向」を支えている。
という現実がある。今後中国産への目は厳しくなっても、排除すれば安く楽しめる居酒屋などは成立しない、と言う。スーパーでも食品売り場の3~4割は中国製とされ「中国製を撤去したら、売り場は成り立たない。日本の食生活が成立しない」と言う。
偶然かもしれないが、1/31日付け朝日の2面でこの問題を報じているが、その紙面の下には現役バイヤー・調達業務研究家坂口孝則の「牛丼一杯のもうけは9円」という本の広告が載っていた。そこでは「薄利多売で終わるか?高収益となるか?それは「仕入れ」の知恵一つ!とうたわれ、「プロが空かす仕入れの丸秘テクニック」として、倒産仕入れ(倒産企業の在庫を丸ごと買い取る)、詐欺仕入れ(廃品回収と偽りお金をもらって商品を入手)などの『手法』が紹介されていた。直接中国からの食品輸入とは関係ないが、「大競争時代」のなかで、『安全』、『品質』などを犠牲にしていかに安く仕入れるかということが追求されていることが期せずして説得力を持って語られていた。

問題はこのように日本が食料の大きな割合を輸入に依存しているのにもかかわらず、国の輸入食品にたいする検査が緩いことだ。厚労省は食品衛生法に基づき、輸入野菜などは抜き取り検査で残留農薬が基準を超えているか調べている。しかし、ギョーザなど多くの原材料を使った冷凍の加工食品については残留農薬の検査はしていない(朝日1/31付け)。06年度は届け出のあった185万件のうち20万件が検査された。厚労省は監査に当たる人員を増やしていいるものの、・・・検査の割合はここ数年、1割程度にとどまっている(同上)。その背景にはアメリカの強い要求で輸入食品の検査を緩和してきた経過があるという(しんぶん赤旗2/2付け)。

中国からの輸入食品といえば思い出されるのは昨年AERAの「元商社マン、ウナギ、養蜂業者らが証言」という記事で、発がん性抗菌剤、抗生物質、農薬などを日本企業が持ち込んでいた、と書かれたことだ。この記事を引用しての『人民日報』の書き方は、悪いものはすべて日本からきたといったもので受け入れられるものではないが、日本の輸入業者に責任の一端があることは確かだろう。朝日2/1付けによれば、
食品メーカは、外食や小売業界からのコスト削減要請に応えるため、大手企業を中心に海外生産へのシフトを進める。
その中心は中国だ。・・・ 現地に駐在員を置く商社が日本メーカの要求する企画を生産できる現地企業を見つけ、品質や納期、コストの管理まで請け負う手法を確立。メーカーにとって中国での生産を「手間のかからない選択肢」に仕立て上げた。
とし、現地の従業員の衛生意識を変えるのに苦労した、という水産加工品メーカの担当者の話を紹介する。ところが、コスト面から、現地での監督に日本側から人手を割くのは難しい、という事情がある。
しんぶん赤旗2/2付けは、
問題の冷凍ギョーザは、中国河北省の「天洋食品」が製造しました。日本たばこ産業(JT)の子会社「ジェイティフーズ」が企画し、総合商社「双日」の子会社「双日食料」と「天洋食品」の三者が協同で試作・生産したものです。コストを引き下げるために、日本企業の企画・指示で海外の工場に生産させる典型的な「開発輸入」です。
安全の確保をコストの犠牲にしていなかったか。当事者はもちろん「開発輸入」に関わった企業には徹底して検証する責任があります。
と指摘している。

こうした輸入業者の問題は、裏返せば中国側の問題と関連してくると思う。
問題の「天洋食品」は設備も衛生管理の仕組みも一流であり、中国で「模範的な工場」とされていたという(朝日2/1付け夕刊)。そういう工場だからこそ輸入業者も目を付けたのだろうが、日本の商社が衛生管理まで指示をするというやり方ではたして企業として自主的な品質向上への意識が高まるのかという疑問が生ずる。
同社では製品は主に日本に輸出されていた。中国当局が「品質管理は完全で、作業員の技術は完全で、作業員の技術も高い」とお墨付きを与える優良企業だというが、それだけに国家の威信がかかってきてしまう。実際今回の事件を中国では食品安全の問題というより、企業や国家の信用失墜をねらったテロ事件として扱われているというが、それは尋常のことではない。この事件を機会に中国での食品衛生の問題を総点検するということにでもなれば、中国にとって得るものがあるだろうが、国家の威信の問題ととらえてしまうと消費者として企業に改善を求めるという事にはならないだろう。日本で赤福は営業を再開したが、消費者の信頼を失墜し、それへの反省を表明し、信頼を回復するための仕組みを作り出すなどのコストを払った。日本においても偽装問題は後を絶たないので引き合いに出すのもはばかられるが、はたして中国において、衛生管理などに失敗したら消費者の信頼が大きく失われるというインセンティブがどの程度はたらいているのかということが気になる。そこにはターゲットになる国民の衛生に関する意識の高さというファクターもあるのだが。

いずれにせよ、日本としては「開発輸入」をするのであればそこで必要な衛生管理がなされるようにする全幅の責任があるのであり、そうでないなら中国の業者を競争原理で選択することによって、中国の業者側に品質へのインセンティブを発揮させるようにし向けることが求められる。たんに安く買いたたくという姿勢に対しては今度は日本の消費者が厳しい目を向けなければならない。

忘れてならないのは、世界的な食糧問題、および地球温暖化防止という視点だ。
バイオマス発電などの影響で世界の食糧問題は逼迫してきた。いつまでもより安いものを求めて国民の生存に関わる食料の多くを輸入に頼るという状態を続けていられる保障はない。また食料の輸入は地産地消に反し、輸送にエネルギーがかかる。低炭素社会をつくるというなら、食料をできるだけ近くから調達するという方向に切り替えていかなければならない。ここで詳しく論ずることはできないが、差し迫って考えなければならない問題でもあるのだ。

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